宇宙のゴミ問題
2009年2月、アメリカとロシアの人工衛星が宇宙空間で衝突した。この大事故で、宇宙には衛星の破片が大量に散らばった。今、地球を取り巻く宇宙空間には運用を終えた衛星やロケットなど、制御不能の人工物が漂い、問題となっているという。
猛スピードで飛ぶ危険な宇宙ごみ
「レーダーなどで追跡可能な10cm角以上の宇宙ごみは、今や1万3千個以上あると言われています」と話すのは、日本宇宙フォーラム特任参事の吉冨進さん。軌道が特定できない細かいサイズのものも含めると、その数は何十万個にもなるのではないかという。
宇宙ごみの問題点のひとつは、そのものすごい破壊力だ。人工衛星は、地球に落下しないだけの速度が必要なので、ものすごいスピードで動いている。高度にもよるが、地上に近いものは秒速8kmくらい。衛星単体でもぶつかったら大変危険な速度なのに、衝突などでできた宇宙ごみには衝撃のエネルギーが加わり、もっとスピードを増して漂うものもあるのだそうだ。
現役で活躍する多数の人工衛星や、宇宙飛行士による有人宇宙活動にとって、大量の宇宙ごみは脅威となっている。1998年に建設が始まった国際宇宙ステーションも、何度も宇宙ごみにぶつかりそうになり、この10年間に8回も軌道を変えたという。この3月からは若田光一さんが長期滞在しているが、宇宙ごみの危険と隣り合わせの日々であることは間違いない。
生活に欠かせない衛星。破壊されたら、暮らしは?
地上で普通に暮らす一般市民に影響が及ぶことはあるのだろうか。
「皆さんになじみのある気象衛星や放送用の衛星、通信衛星、GPSなどは、どれもバックアップの衛星が待機しています。ですから、もしものことで衛星が破壊されてしまっても、サービスそのものがなくなる、ということはありません」(同氏)
不便なのは、バックアップに切り替える間だけ、ということでほっとした。しかし、増え続けるやっかいな宇宙ごみをだれがどうやって回収するかということになると、簡単は話ではないようだ。なにせ場所は宇宙空間。たどり着くことも簡単ではない。
ロボットでごみをキャッチし、大気圏で燃やしてしまうなどの技術が開発されているが、まだ実用には至っていない。吉冨氏によれば、すでに存在する大量のごみを回収するのは不可能とのこと。そんなわけで、今後は宇宙ごみをなるべく増やさないようにする、という国際的な取り決めが2007年にできたばかりなのだそうだ。
衛星を打ち上げたら、責任を持って最後まで処分する。宇宙にもそんなエコの時代が訪れている。
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